こんにちは、Human Augmentationを投資テーマに掲げた15th Rock Venturesです。ここ最近ようやく少しづつですが聞かれるようになった「Human Augmentation」の実態をもっと皆さんに知ってほしく、Human Augmentationのカオスマップ公開と、カオスマップ内掲載のいくつかの面白いスタートアップを紹介いたします。
個人的には、こうアニメとかSFの世界観が現実になってきているという実感が湧いてくるので、眺めているだけでもなんだかワクワクして面白いです。是非ご覧ください。
Human Augmentationの分類とレベル分け
Human Augmentationと一口に言っても、様々な機能の拡張があると考え、私たちは ①脳の拡張 ②存在の拡張 ③身体能力の拡張 ④五感の拡張 に分けて捉えています。また各分野内でも目指す状態が異なるものも多いので、レベル分けをしました。【計測/把握 → 再生/治癒 → トレーニング/強化 → スーパーヒューマン】といったレベル分けで考えています。
Human Augmentationカオスマップ2020
上記の4つの分野と4つのレベル分けをしたものが上記マップになります。
現在120社掲載しております。HA分野で活動しているのに掲載されていない!というスタートアップの方は是非ご連絡ください。
1.脳の拡張
運動能力を高める【Halo Neuroscience】
Halo Neuroscience(ハロ・ニューロサイエンス)は、ヘッドフォン型のデバイスを装着し、脳の運動野に電気信号を与えることで、スポーツ選手などのパフォーマンス向上を引き出します。ヘッドフォンに付いている突起物が電極の役目を果たし、脳の運動皮質につながるニューロンをスピードアップさせるのですが、これは反復練習で脳が学習する際の効果を高めます。アスリート以外にも、音楽家が楽器を演奏練習する際や、一般人のゴルフ練習や筋トレ等、さまざまな身体的学習にも効果があると言われています。
The Science Behind Halo Sport – YouTubewww.youtube.com
鬱病を改善する【Flow Neuroscience】
Flow Neuroscience(フロウニューロサイエンス)は、ヘッドセットを装着することで、経頭蓋直流刺激(tDCS)を与え、うつ病患者に頻繁に見られるDLPFC(脳の前部領域の活動低下) の脳活動を回復させることで、抑うつ症状を減少させます。あわせてアプリでは、行動療法と呼ばれる方法を用いて、うつ病の症状を大幅に軽減する抗うつ活動に取り組むことができます。バーチャルセラピストが50回以上のセラピーセッションをガイドし、睡眠、食事、運動、瞑想などの改善方法を伝授します。
C向けの神経刺激パッチの商品化を進める【Thync】
Thync(シンク)は、自律神経経路に着目し、医療用ではなく、日常使いできるようなto C向け神経刺激パッチの商品化を進めています。すでに2つの商品が販売されています。
■ThyncRelax Pro:
ストレスの軽減やより深い睡眠導入を促すパッチです。首の後ろに小さなWearable podを装着して電気信号を送信して、脳波を刺激します。
■ZING:
リラックス効果を促すThyncRelax Proとは正反対に、カフェインを摂取したときのような心身ともにエネルギッシュで集中力を向上させた状態を実現できるパッチです。耳の後ろにパッチを装着することで、大耳介神経を刺激し、交感神経を活発化させます。
2.存在の拡張
宇宙で働くロボットを実現させる【GITAI】
GITAI(ギタイ)は、宇宙飛行士の作業を代替し、コスト低下・作業の効率化を狙う宇宙作業用ロボットを開発しています。AIを用いた自律制御と地上のオペレーターが専用のロボット遠隔操縦システムを組み合わせることで、従来のロボットでは困難であった汎用的な作業(スイッチ操作、工具操作、柔軟物操作、科学実験作業、組み立て作業、負荷の高い作業等)を1台のロボットで遂行できる性能を実現しています。
オペレーターが地上から遠隔操作する専用システムは、ロボット側から送られる力覚や触感等の4種類の力触覚をオペレーターに伝える機能が付いており、さらにロボット側の映像を観る際に、CG技術でMR(Mixed Reality)による操作支援機能も付いていることで、オペレーターは直感的にロボットを操作できます。
H1 | GITAIH1 ロボット操縦システム。宇宙で作業するロボットをオペレーターが地上から遠隔操作する際に使用する操縦システムです。 GIgitai.tech
2Dを3Dへ即座に変換する【Double me】
DoubleMe(ダブルミー)は、さまざまな3Dコンテンツ市場(ゲーム、3Dアニメーション、VR / AR、3D印刷など)向けに、2Dビデオを3Dモデルにリアルタイムで変換するシステムを提供します。スマートフォンとカメラの既存のハードウェアベースを活用して、ビデオの各フレームを多層3Dモデルに変換します。
※VRは作成コストと手間が非常に掛かるため、どうしてもコンテンツを作りまくるということができなかったですが、もう少ししたら誰でも即座に3Dモデルを作成できる時代が来るのではと考えています。
VRグラスなしで3Dデータを可視化する”ホログラム”を実現【Voxon】
Voxon(ボクソン)は、特別なメガネやヘッドギアなしで、あらゆる角度から肉眼で見える「ホログラム」を実現します。通常、3D技術は、シーンの複数ビューを使用して立体視ビューを作成しますが、Voxonの技術はハードウェアとソフトウェアの組み合わせで、光を物理的な空間に投影することができます。ディスプレイ自体は、3Dプリンターのように動作していて、3Dデータを数百のレイヤーにスライスし、スクリーンに一度に投影されます。
※人々が眼鏡やヘッドギアを着用せずに、同じ空間で視認・コミュニケーションを行えるようになるので、より実態に近づくといった感覚でしょうか。
3.身体能力の拡張
研究者・開発者向けにゲノムデータ提供する【Shivom】
Shivom(シヴォム)は、多数のゲノムデータを融合した研究データの解析と、ブロックチェーンを用いたゲノムデータの販売を行っています。
これまで企業ごとに閉ざされていたデータを開放し、組織間のデータを匿名での共有を可能にします。データを安全かつ確実に収益化する方法を提供しており、世界中の研究者が生データに触れることなく、プライバシーを保護した方法で簡単にデータを分析することができます。また、ゲノム提供者は、個人で保存するか、オープンソースで保存するか、収益化して残余収入を得るかのいずれかを選択できます。
※世界中の患者データを共有することで、患者のワークフローを効率化するだけでなく、複雑な疾患や希少疾患の研究にも応用が期待できます。
労働作業を楽にするエクソスケルトン【Skelex】
Skelex(スケレックス)は、工場等で働く人々のために作られたボディエクソスケルトンで、電源・バッテリー不要の動力無しで頭上の動作や真正面の動作を楽なものにします。FlexFrameという独自のテクノロジーを活用しており、それはユーザーの体型に適応し、肩関節の生物的な動きをサポート、対象物の重量を上半身から下半身に移動させる技術です。重力を補うためにエネルギーを蓄えたり、放出したりします。
薬を使わず副作用なしの電子的治療を開発する【ElectronRx】
ElectronRx(エレクトロン)は、電子的に行うデジタルヘルス技術を活用して、身体に負担をかけずに遠隔診療や疼痛管理するサービスを開発しています。遠隔診療では、手頃な価格で医療グレードの心血管健康モニタリングプラットフォームを提供しており、それはスマートフォンのカメラを使用して、心拍と脈拍が体内を循環する際の血流の変動に対応する光学的血行力学的信号を記録することで、自宅で心血管の健康状態の監視を安価に実現します。また、疼痛管理では、体の治癒メカニズムを刺激するという原理に基づいて、低電流の電気パルスで生理痛を緩和するデバイスを開発中です。電流と電圧を送ることで筋肉を刺激して、新しい血管の成長を促進させ、患部周辺の血流を増加させることで、虚血による痛みや炎症が軽減されます。
家庭で睡眠障害を検知するパッチ型デバイス【Onera Health】
Onera Health(オネラ・ヘルス)は、家庭で医療グレードの睡眠障害検知を行えるデバイスを開発しています。これまで睡眠障害を検知するためには、入院検査で全身たくさんのコードが繋がれた状態での検査が一般的でしたが、Onera Healthの持つ独自の半導体技術により、頭と胸にパッチを貼るだけで検査できるデバイスを実現しました。Onera HealthはIMECという世界的に半導体の最先端技術を保有する研究機関からスピンアウトしたスタートアップです。
※15th Rock Venturesの投資先です。
4.五感の拡張
手指の動きを検出・操作ができる【Coolso】
Coolso(クールソー)は、リストバンド等のウェアラブルデバイスによって、筋肉が動く際に発する生理信号を感知し、ユーザーの手と各々の指の動き・力の入れ具合を検出するデバイスを開発中です。医療現場でのリハビリ等における活用や、VRゲーム上で指示を出すデバイスとしても検討中です。
消防士向けにARグラスを開発する【Longan Vision】
Longan Vision(ローガンビジョン)は、消防士向けのARグラスを開発しており、煙が立ちこもって視界が悪い現場でも、サーモグラフィと光学技術とコンピューターサイエンスを組み合わせた最先端技術を活用して、物体や人など見えなかったものを見えるようにするというものです。ARグラスに加え、消防士間の互いの状況を把握するための消防士・司令塔間でのコミュニケーションエコシステムも構築中です。
※15th Rock Venturesの投資先です。
※過去記事にて詳しく公開しています
病院向けにエージェントシステムを開発する【EJENTA】
EJENTA(アジェンタ)は、日常のリモートケアが必要な患者さんに対して、ウェアラブルデバイス等から情報を検知し、遠隔で患者へ指示を出すリモートケアサービスを開発中です。EJENTAは、NASAからのスピンアウトで、宇宙ー地上間で遠隔指示を出す際に使われていたミッションコントロールを医療現場で活用している技術になります。リモートケアサービスだけでなく、コロナ禍での医療現場における看護師含めた指示コントロールができるシステムもすでに開発・実用化されています。
※15th Rock Venturesの投資先です。
※EJENTAをご紹介する記事は、また別途公開予定です。