VCからの資金調達用資料の作り方 by Takeshi Minamoto

15th Rock Venturesが発行するNews letterから一部抜粋しています。今回は、GP中島によるコラムを掲載します。
※弊社ニュースレターご希望の方は、こちらよりご登録ください!

最近、久々にオフラインでのスタートアップピッチイベントに審査員として参加しました。参加者は主にシードステージの方がほとんどで、皆一様に熱意があり、解決しようとしている課題も素晴らしく、とても楽しいイベントでした。その後、イベント登壇者及び参加者複数名から、さらに個別でアドバイスが欲しいと言われたため、それぞれの方と打ち合わせをしました。その際、全ての方に共通して思ったことが、『せっかく素晴らしいビジネスをされているのに、資料がピッチ資料から変わっておらず、VC向けに最適化されていないため、それではうまく伝わらないだろうな。』ということです。

まず大前提として、VCに向けた資金調達資料は、ピッチ用資料からは大幅に構成を変えないといけません。ピッチは大体の場合、5分程度での説明時間で終わるように、5〜10枚のスライドで作成することがほとんどだ思います。構成は、解決しようとする社会課題、市場規模、チーム等の説明に大半が割かれている場合が多いです。ピッチ用資料としてはそれで十分なのですが、VCからの資金調達資料としては、不十分です。

私が資金調達用の資料に求める最低限の要素として、1.会社概要 2.チームメンバー 3.事業(サービス)概要 4.市場概要 5.競合分析 6.短期成長戦略 7.ユニットエコノミクス 8.エクイティーストリー 9.事業計画 10.Appendixなどが挙げられます。項目と順番には好みがあると思いますが、個人的にはこれがスッと頭に入ってくる構成です。以下にポイントを解説します。


  1.  会社概要
    設立年月日、従業員数、資本金等一般的なことを箇条書きで簡潔に書きましょう。

  2. チームメンバー
    恐らく半分くらいの方が資料の最後の方に載せていると思います。ですが、構成としては最初に持ってきている方が好ましいです。スタートアップの企業価値はステージが早ければ早いほど、その価値に占めるチームメンバーの割合が大きくなります。ですので投資家としては、『誰がその事業をやっているのか』が最も気になるポイントと言っても過言ではありません。顔写真付きでかつ、できるだけ詳細に経歴等も書きましょう。

  3. 事業概要
    KPI,PL等を明確に実績と計画に切り分けて書きましょう。実績と計画(事実と意見)がごちゃまぜ、もしくは明示されてない場合が多い気がします。また、事業系統図は必ず入れましょう。投資家としては当該サービスのビジネスのステークホルダー、バリューチェーン等が一目でわかるので、理解は早くなります。

  4. 市場概要
    割愛します。

  5. 競合分析
    4象限に分けてのポジショニングマップをよく見ますが、それではメッシュが荒すぎると思います。個人的には、自社サービスと事業の構成要素を20〜30ほど洗い出し、他社と並べてマトリックス(星取り表)を作成いただくのが、解像度を上げる最適な方法ではないかと考えています。

  6. 短期成長戦略
    1〜1.5年の成長戦略を明示することも大切です。これはつまり、今回の調達資金を使って、どういった戦略で自社の事業を伸ばして行こうとしているかを定量的に表すということです。散見されるのは、自社の事業をKPI分解した際に、どのKPIを能動的に伸ばしていけるのか、もしくは受動的(市場要因等に依存)なのかを明確に切り分けられていないということです。とはいえ難易度は高い項目なので、投資後にVCと相談して設定しても良いと思います。 

  7. ユニットエコノミクス
    みんな大好きなLTVやCPAなどの要素です。特にBtoBの場合は、何をユニットとして設定するかが難しいので、これもVCと相談しながら設定すると良いかも知れません。

  8. エクイティーストーリー
    エクイティストーリーとは、広義で言うと、投資家に向けて自社のビジネスモデルや市場環境、成長戦略などを総合的に説明し、長期的に企業価値がなぜ増大するかという説得力のあるストーリーを示すことです。ただそれだと、成長ドライバーが何かというのがボケてしまうので、わかりやすく、ホップ、ステップ、ジャンプの3段階で売上(もしくは利益)を伸ばす新規事業セグメントの追加、(海外等の)市場の追加を描くことをお勧めしています。


以上、つらつらとテクニカルなことを書きましたが、経営者が当該ビジネスにかける想いが、一番重要なことは言うまでもありません。ぜひ、熱いプレゼンをキャピタリストにぶつけてください。

Takeshi Minamoto