General Partnerの中島による記事です。
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Next Big Thingに、次なるバイオサイエンス
「Next Big Thingは、バイオサイエンス」というと、遅いんじゃない?と思われる方も多いでしょう。一方で、「有機物が、半導体や電子機器/製品の世界に今後入ってくるだろう」「Next Big Thingは、有機物を活用したコンピューター製品」というと、それはちょっと早いんじゃない?という意見もあるでしょう。
Human Augmentationカオスマップ2022年版でも紹介している「Cortical Labs」や「Koniku」といったスタートアップでは、バイオサイエンスによる有機物がシリコン半導体の代わりに使われている。有機物を使うことによって、シリコン半導体では実現できなかった計算速度や精度が高い機能と、超低消費電力での駆動の実現を目指している。
皆さんご存知の通り、AIの分野では、脳のシナプスの原理から学ぶ(場合によっては模擬する)ことで、ディープラーニングなど革新的な技術の進展が起きている。また、Intelは「Loihi 2」という脳型演算ICを開発するなど、情報工学や電子工学の分野では、有機物を半導体や電子機器に取り入れる流れが起きている。
Next Big Thingは、次なるバイオサイエンス。
―つまり、有機物を活用したコンピューター製品なのではないか?と、最近感じ始めた。
なぜ、有機物なのか?
皆さんが使っているコンピューターや様々な電子機器は、ほぼ全て無機物で作られている。現在、世界中で不足している半導体も、原材料はシリコンを使った無機物で作られている。一方で、最近の液晶テレビやスマートフォンには有機ELという有機物が使われ始めている。20年ほど前の私が大学院生で就職活動をしていた頃、色々な企業の研究室にて有機ELの試作品が作られていた。
当時の有機ELのディスプレイは白黒とかで、製品になるまで非常に時間が掛かるだろうと感じていたが、これはもしかして、ユーザーが使う電子製品の中に有機物が入ってきた最初のモノだったのではないか?
人間を含む生物はすべて有機物で構成されているが、人間や生物を構成する有機物はとても壊れやすく、構造自体が未知のものが多い。しかし、極めて高性能で効率的な機能を多く含んでいる。Intelが研究開発している脳型演算ICは、通常のシリコン半導体よりも消費電力を大幅に抑えられるし、従来のノイマン型コンピューターにはできないことができるのではないかと期待されている。
人間は古来より、犬や牛や馬などの家畜に色々なことをさせてきたが、産業革命以降、自動車やコンピューターなどの多くの無機物が人の生活や活動の多くを支える形に変わってきた。しかしながら現代でも、麻薬探知犬など、人間や無機物の機械やコンピューターでできないことを動物が担っているし、非常に精度の細かい穴をコンピューターよりも人の方がつくれたりする。また、飛行機やヘリコプターなどより昆虫や鳥の方が極めて効率的に空を飛べるが、最新のロボティクス技術を駆使しても昆虫や鳥のような効率的な飛び方は再現できないのである。
今後の妄想
IntelのLoihi 2は、脳のシナプスの動きを再現した「無機物」のシリコン製である。一方で、世界のスタートアップではすでに、動物実験の代わりにバイオ3Dプリンターでプリントした細胞や臓器に対して新薬の試験を行ったり、有機物がシリコン半導体の代わりに使われる取り組みが行われている。
バイオサイエンスで、高精度な鼻や目や脳が作られ、自動ドアや監視カメラやセンサーなどのように、家庭やオフィスや様々な施設で活用される未来は、そんなに遠い話ではないのではないか?
私が大学院の時に見た、企業の研究所の有機ELの実用化までには20年弱もの時間を要している。我々VC投資で見据える10年というファンド期間との兼ね合いを見ながらも、今後の世の中を大きく変えるであろうバイオサイエンスの分野には注目していきたい。