こんにちは、15th Rock Ventures Junior Capitalistの豊田です。
突然ですが、15th Rock Venturesはちょっと変わった独立系VCです。まず、投資をHuman Augmentation(人間拡張)というテーマに絞っている点、2つ目にSpireteというスタートアップスタジオを兄弟組織として運営している点です。
はじめに
今回の記事ですが、「なぜ独立したか?」「そもそもなぜ今のVC形態に至ったのか?」みたいなところを中心に、ファンド組成~クローズまでのストーリーをまとめています。今後、ファンド立ち上げ時の実務周りのノウハウも書きたいと思いますが、まずはリアルな話もお伝えできればと思い、書いてみました。
15th Rock Venturesは、投資テーマも形態も、日本では珍しい形のVCだと思いますので、今後独立系VCを創りたいという方にとって、何かしらのお役に立てればよいなと思っています。
ちなみに、弊社GP二人のバッググラウンドです。
二人は、まさに本日3/19に上場した「ココナラ」の共同投資で出会っています。
独立自体は、目的ではなく手段でしかない。
―何がきっかけで独立を決めたのか?
15th Rock Venturesを立ち上げる前は、中島さんがMistletoe、源さんがニッセイ・キャピタルに。
源「それこそ元から、独立したいというわけではなかった。ただ投資が好きで、VCで投資をやっていくにつれて、上の判断で左右されるのではなく『自分がやりたい投資を純粋にやりたい』と思うようになりました。自分でやりたい投資をやると目的を決めたときに、挙げられる手段としての独立を選択しました。」
中島「Mistletoeで投資責任者を務めていた当時、ある日、泰蔵さんから『独立しなさい、あなたならできるよ。』と言われたのがきっかけでした。」
運命共同体である共同代表は、真逆の投資領域。
―GP同士は一度決めたら10年以上の付き合いに。どうやって互いを選んだのか?
源「初めは誰かと共にファンドを組成しようとして動いていなかったです。元は1人GPでの独立を考えていて、ファンド営業の件で、当時Mistletoeの投資責任者であった中島さんに連絡しようとしていた時に突然ひらめきました。中島さんと一緒に組んだら面白いんじゃないかと。」
振り返れば、元々1人でやろうとしていたところに、中島さんとなら組むことができた理由があったそうです。
①発行体(スタートアップ側)へ敬意があること
②強みとする投資領域が全く別であること(源は国内・IT系、中島は海外・技術系の投資スタイル)
普通のVCを立ち上げるだけじゃ物足らない。
―15th Rock Venturesの兄弟組織である、中島が代表を務めるスタートアップスタジオ「Spirete」も同時期に立ち上げを。その背景は?
中島「ただVCをやるだけではつまらない、と思ってました。Mistletoe文化を踏まえて、VCはコミュニティを持ってこそ価値があるものだと考えていました。
ではどんなコミュニティを抱えるか?と考えた時に、自分の出自が産業革新機構&フランス発のディープテックイベントHello Tomorrowの日本での立ち上げをやっていたために、大企業幹部との強いコネクションがあることが強みでもありました。
そして、何よりも当時、日本で『ディープテック』が流行らない理由の1つに、優秀なエンジニアが大企業から出てこないからだと考えていました。
ですので、ただVCをやるだけでなく、大企業を巻き込んだグローバルで活躍できるようなディープテック系スタートアップを生み出せるスタートアップスタジオも並行してやりたい、と決意しました。」
Harvard Business Review 2018年寄稿
世界の新潮流「ディープテック」とは何か
https://www.dhbr.net/category/Deep_Tech
VCは産業を創る仕事なので、テーマを掲げるべき。
―投資テーマ「Human Augmentation」を決めたのは?
15th Rock Venturesは、Human Augmentationという一見変わった投資テーマを掲げていますが、これは中島がEDGEofで泰蔵さんと「アイアンマンが好きだ。」と話していたことがきっかけでした。
中島「まず前提として、VCは産業を創る仕事なので、投資テーマを掲げるべきだと思っています。その上で、Human Augmentationを思いついたきっかけを正直に言うと、元々はアイアンマンへの憧れから来ています。アイアンマンのように、自分で作ったもので、自分の夢を叶える世界を実現したい、というところがスタートでした。」
源「スタートアップもVCも、何らかの社会課題を解決するために存在しています。Human Augmentationというテーマが面白いのは、人間の能力自体を変えるので、その社会課題の捉え方を大きく変えうると考えています。例えば、人間が100km/hで走れる前提に立ったとき、車自体が要らなくなりますよね。そうした状態になると、社会課題の定義が変容すると思っています。
コンピュータのように、人間へのインプットとアウトプットが全て自然にできるようになると、最終形態として全てのプラットフォームは人間に集約されると考えています。結果論ではありますが、掲げる投資主題としては奥深いので、Human Augmentationにして良かったと思っています。」
そして、エコシステムを創りうるのがVCだからこそ、私たちはHuman Augmentationを投資テーマにする上で、最も人間を人間たらしめる「倫理観」に配慮しています。Human Augmentationは、ハード・ソフトといった投資領域を捉えるだけでなく、哲学も絡んでくる究極に面白いテーマであると私たちは考えています。
尖ったテーマだからこそ、注目してくれた。
―独立して大変だったことは?
源「やっぱり、ファンドレイズが大変でした。特に我々が投資テーマに掲げているHuman Augmentationが荒唐無稽だと言われることも度々ありました。」
中島「ただ我々のLP投資家様の中には、純粋に僕らの投資テーマを面白いと言ってくれて、出資に繋げてくれています。そういう意味で尖った面白いテーマを掲げられたのは正解であったと感じています。」
最後に
今回、1号ファンドのクローズにあたって、中島さんと源さんに色々とインタビューをさせていただきました。私が言うのも手前味噌ですが、お二人は本当に人間として素敵なお人です。元々広告代理店で、ファイナンス知識もスタートアップの常識もゼロスタートであった私に、いつも学ぶ機会と挑戦する機会を積極的に与えてくれます。発行体への姿勢、VCという仕事への責任、それから特にHuman Augmentationというテーマに対する倫理観の強い軸を持っており、毎分毎秒学ばせていただいています。
改めて、徹さん、源さん、いつもありがとうございます!
そして、これからも15th Rock Ventures一同をどうぞよろしくお願いします。