パラリンピック競技者はオリンピック競技者を超える?
いきなりですが、下図は、オリンピック(赤色)・パラリンピック(青色)における「走幅跳」の歴代1位の記録をそれぞれプロットしたものです。
※ なお、パラリンピックの場合、障害の部位や種類、程度によって各競技に及ぼす影響は様々なため、クラスを細かく分けて競技が行われています。そこで今回は、下肢機能障害と下肢切断の競技クラスである「T/F42~44」の結果のみを抽出しました。(使用したデータは記事の最後に表の形でまとめてあります。)
図から明らかなように、パラリンピックの成績がここ数年で著しく向上しています。もちろん、競技者の日々のトレーニングによって生み出された記録であることは言うまでもありませんが、その一方で、競技に最適化された義足の進化が生み出した記録でもあります。
このまま記録が伸びていき、健常者の記録を抜いた時、果たしてそれは「障害によって失われた機能を単に回復させただけ」なのでしょうか?それとも「既存の人間の範囲を超えた能力の向上」なのでしょうか?
Human Augmentation とは
人間拡張(Human Augmentation: HA)や人間強化(Human Enhancement: HE)とは、身体や認知機能を強化することを目的とした、非常に幅広い技術やアプローチのことで、運動能力などのパフォーマンスを向上させる薬物や義肢、心臓ペースメーカーや人工内耳などの医療用インプラント、人間とコンピュータの統合などの方法を用いて、時には既存の人間の範囲を超えて 特性や能力を向上させることを指します。
この人間強化技術(human enhancement technologies: HET)使用の是非は現在も controversial な、倫理観を除外しては語れないテーマであり、「Human Augmentation技術は広く普及すべきであるが、どれを自分に適用するかは個人で決めるべきである」という思想(トランスヒューマニズム)から、「人間の尊厳を損ない、卑劣なポストヒューマン状態へと移行させてしまうので、一切使用すべきではない」という思想(バイオコンサバティズム)まで、幅広い立場がとられています。
倫理的な問題に加え、「貧富の差拡大を助長するのでは」といった社会的な問題も抱えていましたが、先述の通り、近年の技術の進歩により、より一層慎重な判断が求められるテーマとなっています。
もはや「医学的な治療のために用いる分には問題ない」とする見方すら、かなり怪しいものになってきています。
拙い説明文にて大変恐縮ですが、不明の点がございましたら、ご連絡いただけると幸いです。
筆者紹介
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var profile = {
"名前": "岩崎修登",
"所属": "東京大学 理学系研究科 生物科学専攻 修士1年",
"ポートフォリオ": "https://iwasakishuto.github.io/",
"興味": {
"機械学習": "既存のルールベースよりも柔らかいアルゴリズムに惹かれた。",
"神経科学": [
`様々なNeural Networksでも未だに実現できていない人間の高度な認知機能が\
どのようなメカニズムで実現されているのかを生物学的側面から明らかにしたい。`,
"そしてそれをリバースエンジニアリングしたい。"
],
"人間拡張": [
"(今のところ)有限の人生において、できることが増える・可能性が広がるというのは魅力的。",
"アイアンマン作りたい。"
]
}
};
使用したデータ
※抽出元は、IOC公式サイト・IPC公式サイトであり、以下の表のリンクから各種サイトの該当ページにとべます。
オリンピックのデータ:https://cdn.iframe.ly/RdKx79h?v=1&app=1
パラリンピックのデータ:https://cdn.iframe.ly/pTR84ES?v=1&app=